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青い鳥-1-



「広沢先輩、今夜空いてません?」
 前日期限の仕事を終えたばかりで、なんとなく朝からのんびりムードを漂わせていると、後輩の堀口に声をかけられた。
「飲み会があるんですけど、付き合ってもらえませんか? メンバーが足りなくなっちゃって」
 という誘いに、
「本当? ラッキー」
 と喜んで、すぐに気がかりなことを思い出した。あ、待てよ。堀口はたしか一昨年の入社だ。あいつと同期なんだ。
「それってさ、営業の守谷も行くの?」
 だったらやめるっていうのは、卑屈かなあと悩む間もなく、
「あ、守谷はダメなんですよ」
 あっさり堀口は否定した。
「実はメンバー、三人も足りなくって。こっちは嬉しいけど、女の子に顰蹙かっちゃうでしょ。朝のうちに営業の方にも声をかけに行ったんですけど、やだって断られました。あいつ、あれで人見知りすんですよねー。飲み会とか、あんま出てこなくって。内輪だけで飲むほうがいいみたい」
「オレ、あいつと三回も飲み会一緒になったけど?」
 思わずぼそっと言ってしまった。堀口は勢いこんで頷いた。
「そうなんですよ! 最近あいつが飲み会に出てるって聞いたから、わざわざ声かけたのに、ケンモホロロ。そしたらそばに山内さんがいて、広沢さんを誘ってみろって」
 山内っていい奴だなあ。ぼくは面倒見のよい山内と同期であることに感謝した。同じ課とはいえ、係の違う堀口が声をかけてくるなんて珍しいとは思ったのだ。
「ほんと言うと、広沢さんも飲み会とか興味なさそうと思ったんですけど、よかった」
 にこにこと堀口が言う。
 実は最近のぼくはかなり積極的に飲み会に参加している。「二十八歳、恋人なし」の身が、我ながら気がかりになってきた今日この頃。社会人になってすぐ大学時代の恋人だった真由美に振られてから、恋人いない歴を着々と更新しつづけて、今年五年目ということに気づいて愕然としたばかりだ。
「あれ、でも広沢さん、守谷となんかあるんですか?」
 堀口に不信そうな目を向けられて、少しあせった。
「いや、別に何もないよ。ただ堀口と守谷は同期だから、彼も行くのかなって思っただけ」
 そう言って誤魔化した。守谷と一緒の飲み会に出たくないのは、ぼくの僻みのようなもので、さすがにそれを口にするのは恥かしかった。ぼくはそれまでの三回の飲み会で、気に入った女の子を守谷にとられたような気持ちになっているのだ。
 一回目は山内がぼくのために設定してくれた飲み会だった。
 恋人獲得に一念発起したぼくは、同期で営業の山内に女の子を紹介してくれるよう頼んでいた。ただ待っているだけでは新しい出会いなんてないのは、これまでの五年間が保証してくれている。だいたいぼくの課には女の子がいない。いるにはいるけど、少ないので競争率が高すぎて、ぼくには手が出ない感じだった。
 山内はすぐに動いてくれて、山内の彼女を含めて三対三の飲み会を企画してくれた。こっちのメンバーは山内と同じ係の守谷だった。
 同期の中でも親しいほうだけあって、山内はすごくぼく好みの女の子を連れてきてくれた。ぼくよりも一つ下で、斎藤さんといった。ちょっとおとなしい雰囲気だが、にこっと笑って相槌を打つところなど、かなりいい感じだった。ぼくがすっかりその気になった頃、邪魔が入った。
 もう一人の二十歳くらいの女の子と盛り上がっているように見えた守谷が、突然こちらに割り込んできたのだ。ちょっと強引なくらいに斎藤さんにアプローチをはじめ、ぼくともう一人の女の子は白けてしまった。
 そして斎藤さんは、守谷のほうを気に入ったみたいだった。ぼくはとてもがっかりした。斎藤さんは守谷よりも二歳か三歳上なのに、などとつまらないことを考えたりした。
 それでもまだその時には守谷と好みが一緒だったのだ、と諦めることができた。けれど次の飲み会でも、なんとなく彼に邪魔されたような気がしてならない。その時は本当になんとなく、としか言いようのないくらいのことだったけれど。そもそも次の飲み会で守谷の顔を見たこと自体、「あれ?」と思ったのだ。「斎藤さんはどうしたの?」と嫌味の一つも言ってやろうか、という気にもなった。その時は大勢での合同コンパで、特に「このコ」と言いたいコもいなかったのだけど、少しでも盛り上がりそうな雰囲気になると、きまって守谷が話題をさらっていった。しかしそれは、気のせいと言われればそれまでのことではあった。
 でも二度あることは三度ある、だ。先週の飲み会にいたっては、どうしてもわざととしか思えなくなった。先週の飲み会は、同じ女の子たちとの二回目だったのだ。一回目にはメンバーにいなかった守谷がまたのこのこと現れた。そしてあろうことか、一回目でぼくが目をつけていた、そして二回目で告白するつもりでいた女の子と仲良くなってしまったのだ。
 ようするにぼくと守谷は女の子の好みが似ているということなのだろう。いつも守谷のほうがモテるというわけで、いわば奴はぼくにとっては天敵という存在だ。三、四歳年下の天敵なんて情けない話で、ため息が出る。


 本当は、守谷は悪い奴じゃないと思っていた。二、三度プレゼンテーションなどで組んだことがあるのだ。初めて組んだのは、車で三時間近くかかる地方での仕事だった。それなりに大口の契約だったので、プレゼンには守谷の課の課長とうちの課長との四人で出掛けた。運転が守谷で、行きの車内では、プレゼンの内容の確認や情報交換などで少しは緊張感が漂っていたのだが、なかなかの好感触に安心したのか、帰りの車では後ろの席の課長二人はぐっすり眠り込んでしまった。スースーという寝息に、後ろを見ると、オジサンが仲良く寄り添って寝ているので、笑ってしまった。
「守谷くんの運転がうまいから、課長たち、いい気持ちになっちゃったみたいだよ」
 ぼくが言うと、守谷はくくっと笑った。
「ぼくの運転、乱暴で有名なんですよ」
「ぜんぜん乱暴じゃないって。オレなんかペーパーだからかなりヤバイけど」
「あれ、広沢さん、車ないんですか?」
「あんまりいらないからね」
「そっか、広沢さん、大学も東京だったんでしょ? オレなんて田舎だったから、車ないと生活できなかったんですよ」
「へえ?」
 ちょっと意外な気がした。
「もうすごいですよ。近くに山があってね、走り屋のメッカなの。学生の時、仲間と走り屋見物に行ったことあるんだけど、帰りにその気になっちゃって、信号を時速九十キロくらいで曲がろうとして、クラッシュしちゃったんですよ」
 あははと笑われて、ぼくも吹き出した。
「うっそ。ほんとに?」
「ほんと、ほんと」と守谷は笑った。その屈託のない笑顔をかわいいなと思った。
 朝、顔を合わせた時には、イマドキの若者っぽくて、ちょっと苦手だなあと感じたのだったけれど。銀縁の眼鏡をかけて髪もきちんと整えているし、真面目なスーツを着ているにもかかわらず、なんとなくオシャレな感じで、「年上の受けはよくなさそうだ」なんて邪推もしていた。
 話してみると意外な感じだ。
「怪我はほとんどしなかったんだけど、車ダメにしちゃって。みんなでオレのうち集まることになってたんですよ。で、先に行った奴らが、待っててもオレが来ないから『おかしいな』って言ってて。そのうち救急車のサイレンが聴こえてきて『やべえ』って…」
 そんなふうに他愛のない会話を続けて、ぼくらはげらげら笑いっ放しで帰ってきた。その契約はうまくいって、その後の職員への説明会には課長たちは行かず、ぼくと守谷だけが行った。それはなかなか楽しい仕事だった。二人だけなので守谷は「走り屋バージョンの運転」などとおどけたりした。
「広沢さん、恋人は?」
「えっ? えっとー、実はいない」
 突然訊かれて、誤魔化そうか迷ったけど、結局正直にバラした。
「まずいよなー。ぼく、もう二十八なのに」
 照れ隠しにそう付け加えると、守谷は目を丸くした。
「広沢さん、二十八? 同じくらいかと思った」
「それは無理があるだろ」
 ぼくは苦笑した。
「それより守谷くんこそ、彼女いるんだろ?」
 まあ当然いるだろうなという気分で訊ねると、守谷は曖昧に首をかしげて答えなかった。
「彼女、彼女ねえ、うーん。内緒、かな」
「なんだよ? あ、社内だろ?」
 社内恋愛は禁止ということになっているので、そう突っ込んでみた。禁止と言われてはいるが、社内で付き合っている奴らなんてたくさんいるのに、守谷は歯切れ悪く言いよどんだ。
「うーん、彼女っていうかさあ…。ま、いいじゃない。とにかく広沢さん、なんか年下っぽく見えるんだよな。『ぼく』って言うからかな」
 指摘されて慌てた。
「ぼく、『ぼく』って言ってる? って、あれっ?」
 あははと守谷は声をあげた。
「言ってる! だっからオレ、つられて『オレ』になっちゃうんだ」
「おっまえ、生意気だなー。年下のくせに」
「よく言われるんですよ、『生意気』って。だから気をつけてるつもりなんだけど。広沢さんが悪いんだ、年上っぽくないから」
 そう言ってからかわれた。そんな守谷に一応は渋い顔をしてみせたけど、ぼくは守谷を気に入っていた。だから山内にも「守谷って意外とかわいいな」と言ったことがあるし、それで山内は飲み会に守谷を誘ったのだ。


 一つの仕事が一段落したばかりのため、少し余裕があるぼくの係では、今日は三十分早いランチに出かけることにした。本当はいけないことなのだが、昨日まで返上していた昼食時間の分というわけだ。
 時間のおかげで空いていた食堂は、ぼくらが食べ終わった十二時過ぎにはいつものように混み始めた。そのままそこに居座って食後の一休みをするのは気が引けて、ぼくらは早々に店を出た。会社に戻る途中、主任が、
「せっかくだからパチンコに行っちゃおうかなあ」
 と言い出した。
「うわー、昼休みにパチンコですかあ?」
「あ、オレも行こう」
「ふーん、知的なワタクシは本屋でも寄るかな」
「どうせ週刊誌だろ」
 そんな感じでみんなバラバラになった。ぼくは睡魔を覚えていたので、会社に戻って休憩コーナーで昼寝をすることにした。休憩コーナーには幸い誰もいなくて、ぼくは一番奥のソファを占領して眠り込んだ。
 がやがやと声がして目を覚ました。女の子たちが数人やってきたらしい。どうしよう。咄嗟に起き上がることもできなくて、ぼくはソファの背に隠れるように縮こまった。ありがたいことに彼女たちは自動販売機でジュースを買うと、そのまま近くの椅子に座ったようだった。
「また今日、男たちは飲み会やるみたいよ」
「やんなっちゃうよねえ。私なんか明日までに書類揃えてって言われて、多分残業しなきゃ終わんないのに、肝心の木田は定時であがるつもりなんだよ」
 話の内容からどうやら営業事務の女の子たちらしいと見当がついた。
「そういえばサイテーなのは守谷だよ。バラしちゃうけど、あいつ、他に好きなコできたって言って友香と別れたんだよ。それなのにさ、飲み会行きまくってるみたいなの。『どういうこと?』って感じじゃない?」
 なっにー! やっぱり守谷の奴、ちゃんと彼女がいたんじゃねえかよ。なんでそれで飲み会にくんだよ、もう! 好きなコって斎藤さんかなあ? って、ぼく自身が惜しかったって思ってるだけなんだけど。
「友香、守谷くんと付き合ってたの?」
「同期だしね。どっちにしても社内恋愛はあんまりよくないし、もう友香には別の彼氏がいるらしいけど」
「守谷くんかー、この会社の中じゃかっこいいほうだよね。でもちょっと無神経っぽいとこあると思うな」
「っていうか、会社の中って狭くない?」
「私、会社の中だったらプログラマーの広沢さんってちょっと好みだな」
 突然自分の名が出てあせった。え、どんなコだ? 覗いてみたい気がしたが、ここにいることがバレたら、かなりヤバイ気がして、ぼくはますます身を縮めるのだった。
「えー、やだー!」
 途端に複数の声に否定されて、ぼくはそうとう傷ついた。「やだ」ってどういうことだ。
「なんでよ、ハンサムじゃない」
 最初の声がぼくの代わりに訊ねてくれた。
「センが細すぎ」
「神経質そう」
「ねー」と頷き合う声。
「いかにも理系って雰囲気、かっこいいじゃない。それに優しそう」
「ブー、冷たそうでーす。しょっちゅう手を洗ってそうな感じー」
 一人が言うと、女の子たちはゲラゲラと笑い転げた。笑い声にチャイムが重なる。
「あーあ、チャイム鳴っちゃったよ。またお仕事だあ」
「がんばろー。私たちも飲み会したいねえ」
 騒がしい声が遠ざかり、エレベーターに乗り込んで行ったのがわかっても、ぼくは起き上がれなかった。知らなかった、あんなふうに思われているなんて。
 ショックを受けて、よろよろと課に戻ると、係の後輩が声をかけてきた。
「広沢さーん、遅刻ですよお。いつもより三十分も余分なのに、ダメだなあ。って、主任たちがまだ帰ってこないんです。どうしよう? すっげー出ちゃってたりして。やっぱ昼休みにパチンコはやばいでしょ…」
 ぺらぺらとしゃべり続けた後輩は、無言のぼくにけげんな顔をした。
「どうしたんです?」
「オレって神経質?」
「はあ?」
「営業の女の子たちの噂話、聞いちゃった。オレって神経質そうだって。そう思う?」
 後輩は、ぷっと吹き出した。
「神経質には見えませんよ。それ、寝癖じゃないですか? 昼寝したらせめて洗面所寄ってきてくださいよ。神経質じゃなくてもそのくらい当たり前でしょ」
 くくくと無遠慮に笑われる。
「それに、いいじゃないですか。話題になるだけでも羨ましい。ぼくなんか多分名前も覚えられてないですよ」
 そう言われて思わずため息をついた。
「ここの課って損だよな」
 と、同病相憐れむ。営業なんてさ、仕事は女の子と組んでるし、外でも女の子に会えるし、チャンスはいくらでもありそうに思える。それなのに守谷はぼくの貴重なチャンスを奪いにくる。これって完全に僻んでるってことだろうか。


 待ちかねた終業時間になるとぼくは堀口と連れ立って飲み会の場所に向かった。
「女の子は、受付の相原さんの友だちなんですよ!」
 うきうきした声で堀口が言う。相原さんは今年入ったばかりで、ぼくはまだ話をしたことがない。
「彼女、女子大出身だって知ってました? サークルの後輩も来るって。現役女子大生ですよお。いいなあ、オレ、相原さん本人でもいいんだけどな」
 やけに張り切っている堀口と同じようにぼくも結構期待していた。「いいコがいるといいな」なんてワクワクしながら店に入ると、なんと先に来ていた連中の中に守谷が混じっていた。堀口もそれに気づくとけげんな顔で守谷に声をかけた。
「なんだよ、守谷、今日ダメって言ったじゃん。なんでここにいるわけ?」
 守谷は平然としていた。
「野村にも誘われたからさ。広沢さん、こんばんは」
 その声がやけに挑戦的に聞こえて、ぼくは一瞬むっとして、軽く顎をあげて応えるだけにした。わざと守谷とは離れた席に座る。ぼくらが席につくとそれぞれが自己紹介をすることになったが、二十人ものメンバーなので、全員の名前を覚えるのは難しかった。話題もすぐにバラバラになった。右隣のコが話しかけてきた。ちょっとびっくりするくらい大きな目をしている。
「広沢さんは、どんな仕事してるんですか?」
「オレ? オレはプログラマー」
「えー、かっこいい!」
 そう言われて、ぼくはちょっと笑った。
「かっこいい? どうして?」
「いかにも理系って感じ。私、理数系苦手だから」
「かっこよくないよ。プログラマーなんて損だよ。暗いイメージだし、女の子少ないし」
「やだー」
 あははと笑う女の子を見て、真由美に似てるなと思った。外見ではなくて雰囲気がどことなく似ている。
 真由美とは就職して初めての冬を迎えようとする頃、別れた。一人娘だった彼女は、郷里に帰ってお見合いをするのだと言った。ぼくは彼女を止められなかった。
「一緒に来てって言っても無理だよね?」
 真由美はそんなふうに言った。ぼくは長男ではなかったけれど、もし仕事を辞めて彼女の郷里に行ったとしても職は保証されていない。かと言って彼女の両親を敵に回してまで真由美と付き合い続ける決意もなかった。それは真由美も同じだった。真由美との交際はぼくに選択を迫った。就職して一年目で将来を決めることに不安があった。だからぼくたちは別れるしかなかったのだ。
 二次会はカラオケだった。そこでも一次会の右隣のコが隣に座った。いいコだなと思った。好みのタイプかというとちょっと違うんだけど、話し易くて、一緒にいて楽しかった。
「私、パソコンほしいんですよ。どういうのがいいのかな」
「そりゃ、オレの会社の系列のでしょ」
「あ、そっかー」
 えへへと笑うのが可愛らしい。
 と、奥に座っていた守谷が急に立ち上がって席を外した。トイレにしては早すぎるくらいすぐに戻ってきた守谷は、なんとぼくらの隣、正確には女の子の隣に座った。それはかなり不自然な行動で、皆が一瞬顔を見合わせたほどだった。それまで守谷は二人の女の子にアプローチされていて、彼女たちの間にはしっかり彼の席が空けられていたのだから。周りの雰囲気など意に介さないふうで、守谷はぼくに声をかけた。
「広沢さん、お久しぶり」
 白々しい、とぼくは顔をしかめた。
「会社で顔合わせてんだろ」
「うっそだ。オレ、広沢さんと最近しゃべってないよ?」
 仕事が違うんだから当たり前だ。営業は外に出てることが多いし、ぼくの課はよそに出ることが少ない。山内など営業マンの何人かは時々顔を出しに、というよりは息抜きに、ぼくの課にも来るけれど、守谷はそんなふうに遊びに来たことはない。
「えっとお、守谷さん、でいいんですよね? 広沢さんとお仕事、別なんですか?」
 女の子がそう訊ねる。
「そうなんだ。オレは営業なの。広沢さんはプログラマー」
「それはさっき聞きました」
 くすくすと笑う女の子に、嫌な予感がした。
「だから、私パソコン買う相談に乗ってもらおうと思って」
「ええー、まだパソコン持ってないの?」
 守谷はおおげさに声をあげる。
「そうなんですよお。遅いでしょ? だから、どういうのがいいかなあって」
 女の子はすっかり守谷のほうを向いてしまった。
「パソコンで何したいの?」
「それはー、うふ、インターネット。実はポケットボードは持ってるんです。でもせっかくだからパソコンでメールしたくって」
「なーんだ、ポケットボード持ってるんだ。アドレス教えてよ、携帯からメール送るから」
 守谷は、ほら、と言って携帯を取り出した。そのまま彼女のアドレスを入力している。
 きゃっきゃとじゃれ合う二人を見て、ぼくは確信した。これは嫌がらせだ。ぼくが守谷に何をしたというのだろう? 理由はわからないが、とにかく守谷はぼくの恋愛の邪魔をしているのだ。
 ぼくは腹を立てたまま、ビールをがぶ飲みし始めた。本当はあんまりビールとは相性がよくないのだ。アルコール度数は低いはずなのに体質に合わないのかすぐに酔ってしまう。けれどこれが飲まずにいられるか。



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