迷走 -1-



 征司は、何年ぶりかわからない朋章の家の居間で、居心地悪くソファに坐っていた。そんな征司に頓着することなく、征司の母親と朋章の母親は延々と続けているおしゃべりに余念がない。
 母親たちはこれから二人でクラシックコンサートに出かけ、そのまま都内のホテルに一泊してくる予定だった。
 もともと朋章の両親が同じ月に結婚記念日があるために予約したコンサートとホテルだったが、急に父親に仕事の出張が入ってしまったので、キャンセルするよりはと征司の母親が誘われたのだ。
 征司の一つ下の弟と朋章の姉、征司の妹と朋章が、それぞれ同級生同士ということもあって、二人の母親は仲が良く、お互いの家を行き来していた。征司はともかく、幼かった朋章はよく母親に連れられて征司の家に遊びに来ていた。同じ歳の妹よりもずっと少女めいた愛らしい容貌の朋章を征司は可愛がっていたし、朋章も征司に懐いていた。だがそれは子どもの頃の話だ。
 家を空けることになった母親は、征司に朋章の家に泊まるようにと言い出した。何のためにと驚く征司に、朋章が一人になるのを朋章の母親が心配しているのだという。高校生になっている朋章が一人で留守番ができないはずもないが、征司と朋章は昔仲が良かったので、どうせならということらしい。
 仲が良かったと言っても、征司が中学生、朋章が小学生だった頃までの話だった。大学二年になっている征司にとって、お互いの日常がすっかり離れてしまった今になって、朋章の家に泊まることになったのは思いがけない事態といえた。
 征司と母親が朋章の家を訪れると、朋章の母親はまだ時間があるからとお茶を勧めてくれ、そのまま母親たちはおしゃべりを始めてしまっていた。征司は落ち着かない気分を味わっていたが、目の前で雑誌を読みふける朋章のほうは、我関せずという態度だった。
「征司まで泊めてもらっちゃっていいのかしら」
「あらこっちがお願いしたんじゃない。朋章だけじゃ危なっかしくて。高校生になったら途端に生意気になって、一人で置いといたらどんな悪戯するか不安だから、征司くんに監視してもらいたいのよ」
「朋章くん、すっかりかっこよくなっちゃったわね。昔は女の子みたいに可愛かったのに」
 先刻征司は居間に通された時に、ソファで雑誌を読んでいた少年が朋章だと、とっさにわからなかった。よくよく見れば顔立ちなどは当時のままなのだが、雰囲気がまるで違っている。四つ下の朋章は、征司の記憶ではとにかく小さな可愛い子という印象だったのだが、今では体格も征司とそう変わらなく見えた。
「朋章はひ弱で苛められてばかりいて、いつも征司くんにかばってもらってたのよね。でもこんな大きくなっちゃうと、昔の可愛かった頃のがいいなあとも思うの」
 母親の台詞に朋章が雑誌に視線を落としたまま小さく「アホ」と呟く。
 小学生までの朋章は、何かと周りの子どもたちに苛められることが多かった。子ども社会の中では四歳も違えば征司と朋章の間には十分すぎるくらいの世代の差があったが、中学生になっても征司は、苛められている朋章を見つけるたびに激しい憤りをもって、相手の小学生たちに対峙せずにはいられなかった。
 今になって思い返せば、小さくて可愛らしい朋章にちょっかいをかけたがったいじめっ子たちの心情も理解できる気はしたが、当時の征司にしてみれば、いわれなくくり返される朋章へのいじめには単純な義憤を覚えていた。もしかしたら幼馴染みである朋章が苛められることに、自分に属するものに手を出されるのを不快がるような所有欲も幾許か混じっていたのかもしれない。
 自分をかばってくれる年上の優しい兄のような存在であった征司を朋章が慕うのは当然で、子どもの頃の朋章は征司の後を追いかけてばかりいた。家族ぐるみの付き合いの中でも、朋章は常に征司の隣にいたがった。それがいつから変わったのか、征司ははっきりとは覚えていなかった。
「朋章くんは今でも可愛いじゃないの。アイドルになれそうよ」
「そう言えば優也くんは帰ってきてないの? 夏休みでしょう」
 征司の弟の優也は地方の大学に入って一人暮らしをしている。
「優也は一人暮らしに味をしめちゃってるみたい。休みだって家には寄りつきもしないわ」
「すぐ上に征司くんみたいな優秀なお兄さんがいたんじゃ、優也くんも窮屈だったのよ、きっと。少し羽を伸ばすのもいいんじゃないの」
 目の前で話題にされて、征司はますます居心地が悪くなり、しゃべり続ける母親の隣で退屈そうに雑誌をめくっている朋章に視線を向けた。しばらくぶりに間近く接する朋章は征司の知らない少年のように見えた。征司の記憶の中の朋章は、癖のないサラサラとした黒髪だったが、目の前の朋章の頭は茶髪になっていて、柔かくウェーブさえしている。その隣で笑っている朋章の母親の髪も同じように天然パーマらしいので、成長して癖が出てきたのかもしれない。その変化を知らなかったことが征司に朋章との距離を感じさせた。
 疎遠になり始めたのは朋章が中学にあがってからだったように思う。おそらく自立心が芽生えてきたのだろう、朋章は、子どもの頃のように征司の後を追わなくなったし、高校生の征司にガールフレンドができたことも一因だった。それなりの成長を見せ始めた朋章に代わり、彼女こそが征司の本当に守るべき対象だと信じられた。そして今の征司には守るべき相手はいない。彼女と別れて、すでに一年近く経とうとしているのにいまだに征司の胸は時折痛みを訴える。
 知らず眉間にしわを寄せていた征司を、ふと気づくと朋章が真っ直ぐに見つめていた。征司がちょっと笑みを浮かべると、朋章の目元が緩み、同じように笑い返してきた。滑らかな頬のあたりに少女めいていた子どもの頃の面影が残っていて、征司はなんとなく嬉しくなった。身長は伸びたようだが、まだ顔立ちに甘やかな感じが残っていた。
「じゃ、お留守番は多香子ちゃんとお父さんだけなのね」
「それが多香子は部活の合宿中なのよ。甘ったれだし、マネージャーなんて似合いそうもなかったのに、意外と楽しいらしいわ」
「あら、じゃあお父さん一人なの」
「かえって気楽でいいみたいよ」
 母親たちは声をあげて笑い合った。
「ねえ、時間大丈夫なの?」
 読み終えたらしい雑誌を閉じた朋章に促されて、すっかり腰を落ち着けたようにしゃべり続けていた母親たちは、慌てて立ち上がった。
「たいへん。もう出ましょう。遅れたら勿体無いわ」
 二人してパタパタと玄関に向かいかけて、朋章の母親が振り返った。
「お寿司は6時頃持って来てくれるから。冷蔵庫のビール、征司くんに出してあげて。朋章は飲んじゃダメよ」
「はいはい、早く行きなよ」
 朋章はソファに坐ったままヒラヒラと手を振った。
「すっげーおしゃべり」
 母親たちが行ってしまうと、朋章はぼそっと呟いた。征司がクスリと笑うと、朋章は嬉しそうな表情になった。
「母親は、オヤジが出張になって散々文句言ってたけど、本当はおばさんと出かけられるほうが嬉しいんだぜ。明日はデパート巡りするんだ、なんつって、めちゃめちゃ浮かれてたもん」
「あの人たち、女子高生みたいだよな」
 征司の言葉に朋章は大げさに眉をはねあげた。
「おばさんの女子高生? 気色悪っ」
 吹き出しながらも征司は、やはり朋章は変わったと思った。常にニコニコとおとなしかった朋章がこんな悪態をつくようになるなんて。
 夕食の出前が届くと朋章は冷蔵庫からビールを出してきた。征司に勧めるだけでなく、当然の顔で自分も飲んでいる。慣れた様子でグラスをあおる朋章に、征司は「歳月の流れ」などとほとんど年寄りの感慨にふけってしまった。
「ね、征司くん、まだイカが好き?」
 ほとんど食べ終える頃になって、いたずらっぽい表情で朋章が言い出した。
「ん?」
「昔さ、征司くんちでみんなでお寿司食べたことあるじゃん。みんなが征司くんにイカをあげて、変わりに自分たちの好きなのと交換しちゃったよね」
 征司くんのお寿司だけ全部真っ白になっちゃってさ、と朋章は笑った。ビールで濡れた唇が赤くなっていて、やっぱりまだ女の子に見えなくもなかった。懐かしい話を持ち出されて征司の頬が他愛なく緩んだ。
「あれは純な子どもだった俺を騙した大人たちが悪いよな。トロだのイクラだの全部持ってっちゃうんだもんよ」
「でもまだイカが一番好きなんだ」
 最後までイカが残されていた征司の寿司鉢を覗き込んで、朋章は笑った。
「好きなものを最後に残しておく癖も変わらないんだね」
「朋章は変わったよな」
 最後のイカを口に放り込んで、征司は言った。
「昔はちびっこくて、よくいじめられてたのに、今じゃ身長も俺とほとんど同じくらいじゃん」
「同じどころか、俺のほうが背、高いんじゃない?」
「お、言ったね。何センチだよ?」
「72。でもまだ伸びてるよ」
「あ、くそ、0.5センチ負けた。でも体力ならまだ負けないからな」
「そう?」
「なんだよ、勝負する?」
 からかわれてムキになったフリを装う征司の言葉に朋章は軽い笑みを浮かべた。
「やめとく。援軍が来たら、ね」
「なんだ、その援軍って?」
「俺一人じゃ征司くんに勝つ自信ないもん」
 上目遣いにいたずらっぽく笑う朋章に、征司は「援軍」をただの言葉の綾と取った。
「あったり前。年上をなめるなよ」
 腕を曲げて力瘤を作ってみせる。朋章は軽くその腕に触れてきた。朋章の指は細く長かったが、意外に筋張って男っぽい手をしている。
「朋章って天パだったんだな」
「これパーマかけてんだよ」
「うわ、生意気」
 征司はそう言ったが、色を抜いた柔かそうな髪は、朋章の顔立ちに似合って、甘い雰囲気を作っていた。
「朋章、もてるだろ?」
「征司くんほどじゃないと思うよ」
 朋章は「もてない」などと否定することなくあっさり流した。
「俺、小学生の時、中学生の女の子たちに文句つけられたことあるんだ。征司くんのファンだって。お邪魔虫みたいに言われて、すっげー頭きたから「ブス」って言ってやった」
 なまじな女の子が敵うべくもなかった可愛らしい顔立ちの朋章のその言葉が相手にどんなショックを与えたかを想像して、征司は苦笑した。あの頃の朋章に対するおとなしくて可愛い少年という征司の認識は、多少思い込みもあったのかもしれない。ほんの少し意地悪な表情を浮かべている朋章を見て、征司はそう考えた。
「征司くんの彼女はどうしてる?」
「え? 彼女って?」
「いたじゃん、高校の時」
「あ、ああ。会ったことあるんだっけ? うん…もう、別れた」
 征司の高校時代の思い出はほとんどが彼女とともにあった。卒業してからは一緒にいる時間が極端なまでになくなり、ギクシャクしていく関係を修整できなかった。今でも時折胸がうずいて、まだ忘れられないと思っていた。
「俺さ、昔ピアノ習ってたの、知ってる?」
 朋章は唐突に話題を変えた。征司はとまどいながらも、昔の恋人のことから話題が逸れたことにほっとしていた。
「憶えてるよ。オンナみたいだって苛められて、泣いてたことあるじゃん」
 からかう征司に朋章は笑顔で答えた。
「あの時も征司くんが助けてくれたんだよね。で、さ、俺の部屋にピアノ、あったんだよ。だから、あの部屋は防音になってるんだ。ピアノは従妹にあげちゃったんだけど」
「防音かあ」
 征司は朋章の台詞の意図がわからず、曖昧にくり返した。
「そ。征司くんの部屋は、防音してないよね」
「俺はピアノとかやってなかったからな」
「だから玄関まで、聴こえたんだよね」
「何が?」
 征司が怪訝そうに訊き返した時、玄関のチャイムが響いた。
「来た」
 朋章が小さく呟く。
「何?」
「友だち。頼みごとをしたんだ」
 征司の問いに何気ない様子で答え、玄関に出て行った朋章は、すぐに同じ高校生らしい二人の少年を連れて、戻ってきた。一人はやけに長身で、もう片方は朋章よりやや低いくらいの身長だった。部屋に入ってくるなり少し興奮しているような声でしゃべり出す。
「うわ、オットコ前なお兄さんじゃん」
「朋章、マジでこの人やっちゃうわけ?」
「そ。だから応援頼んだんだよ。ちょっと俺一人じゃ無理そうでしょ」
 ソファに坐っている自分を見下ろして交わされた三人の会話が理解できなくて、征司はぽかんと見上げていた。
「何を…?」
「お兄さん、朋章はね、あんたが好きなんだって」
 背の高い長髪のほうが征司に笑いかけるのを、朋章が遮った。
「宏信! 勝手に先に言うな」
「アハハ、まだ告ってもいないんだ」
 無邪気で人懐こそうな宏信の笑みに、征司はうまく事態を把握できずにいた。朋章が征司の隣に腰を下ろした。
「征司くん、さっきの話の続きね。昔、俺が征司くんちに行ったら、玄関で声かけても誰も出て来てくんなくてさ、征司くんの部屋から聴こえてきたんだ、…そういう声」
「そういう声」の意味がすぐにはわからず、首を傾げていた征司の顔がやがて紅潮した。朋章が征司の高校の時のガールフレンドをいつ知ったかに思い当たったのだ。その当時、両親のいない征司の家で二人は愛を交わしていた。
「な…」
 絶句する征司の視線を朋章の目がとらえた。
「あれは忘れられないね。俺、中1の時だよ。征司くんが高2で。夏休み、8月2日。絶対忘れない。あん時、征司くん、初めてだった? それとももう何回もやってたの?」
 無言で見つめる征司に朋章は「答えてよ」と促す。
「俺、すげーショックだった。目の前が真っ暗になるって、ああいうことを言うんだなって実感したよ。なんでショックだったか、わかる?」
 覗き込んでくる朋章の笑顔が、ふいに征司には泣いているように錯覚された。
「俺はね、征司くんが大好きだった。本当にずっと好きで。いつだったかな、そういうこと、エッチのことを知った時に、相手は征司くんじゃないとダメだと思い込んだくらい。そう、俺が征司くんの初めての相手になりたかった。ヘンな話だけど、俺、征司くんになら抱かれる覚悟あったよ」
「そりゃすげえわ」
 聞いていた宏信が脇から混ぜ返す。朋章は相手にせず、征司に言い聞かせるように言葉を続けた。
「それなのに、当の征司くんは「好きだよ」かなんか何回も言いながら俺じゃない女の子とやっちゃってて。俺、あん時マジで二人とも殺してやるって思ったんだよ」
「朋章…」
 物騒な言葉にゴクリと征司の喉が鳴った。
「朋章、脅しすぎだって」
「いきなりそんなこと言われたら、お兄さん、可哀そうだろ」
 傍観していた二人に言われて、朋章は肩をすくめた。
「いや、殺すってのはその時一瞬だけの気持ちだけどさ。いたいけな少年だった俺には、もう信じられないようなショックだったわけ。一時期は結構自棄になっちゃってさあ。俺の初体験は13歳だよ、すごいだろ? しかも同級生で相手も処女だし、かなり壮絶だったよ。痛い痛いって喚かれて、血は出るし、もうびびった、びびった。でもあれで逆に度胸ついたね」
 アハハと明るく笑われて、眉をひそめる征司の肩に朋章は腕を回した。
「だから、さ。せめて征司くんのヴァージンは俺がもらいたいなと思ってたんだよ。やっぱり初めての相手って特別だろ?」
「な、に言ってやがる」
 驚いて朋章の腕を振り払い、立ち上がりかけた征司を、宏信たちがつかまえた。思いがけない展開に、征司は恐怖にとらわれパニックに陥りそうになった。特に体格がいいというわけではない普通の高校生であっても三人がかりでは、同じようにとりたてて鍛えているわけでもない征司に抵抗できるとは思えなかった。
「離せよ。なんだよ、こいつら。朋章、お前、俺のこと好きなんてふざけたこと言って、リンチしようっていうのか」
 少し怯えた目になって、それでも強い口調で卑怯だとなじってくる征司を、朋章は平然と受け止めた。
「征司くんが好きだから傷つけたくないんだよ。俺一人じゃ征司くんに怪我させない自信ないし、宏信も和樹もクラスメイトで仲が良いから、協力してくれることになってるんだ」
「ふざけるな!」
 一喝して征司は渾身の力で暴れ始めたが、両腕をつかんでいる二人を振り払うことはできなかった。朋章の手が征司の頬に触れた。
「俺、けっこう練習積んだし、下手じゃないと思うんけど、男相手ってのは完全に初めてで、征司くんは協力してくれなそうだから、不本意ながらこいつらにお願いしたんだ」
「不本意って、朋章、俺たちだってこういうの不本意なんだけど」
「悪いのと友だちになっちゃったよな」
 宏信と和樹がのん気そうに苦笑してみせる。
 押さえ込まれた征司の服に朋章の手がかかった。
「やめろ!」
 征司の抵抗も空しく、着ていた服は着実に剥ぎ取られていった。
「ねえ、今は本当に恋人いないの?」
 征司のジーンズに手をかけた朋章は、さぐるような上目遣いで訊ねた。
「うるさい」
 必死で太腿をすり合わせるようにして脱がされることに抵抗していた征司から、強引にジーンズと下着がまとめて引き下ろされた。全てを脱がしてしまうと、朋章は征司を鑑賞するように少し離れて眺めた。その視線から逃れようと身をよじる征司の背や脇腹に、押さえている二人の服の布地が擦れてあたる。普通に服を着ている三人の前に自分だけが全裸で晒されていることが、征司に屈辱を感じさせた。
「風呂場に連れてって」
「やめろって!」
 暴れる征司を、朋章たちは三人がかりで引きずるように浴室に連れ込んだ。
「まずはキレイにしてあげるから」
 朋章の合図に、和樹が持ってきたドラッグストアの紙袋から浣腸薬を取り出した。
「ったくよ、こういうものは自分で買えよな、朋章。人をパシリに使うんじゃない」
「和樹、かわいいの。レジで真っ赤になっちゃってさ。オバサンの台を狙って行ったのにちょうど和樹の番で運悪くバイトの女の子に交替されちゃったんだよな」
「いいから、早く」
 面白がって話し出した宏信の言葉を遮って、朋章が手を差し出す。
「なんだよ、がっついてるとお兄さんに嫌われちゃうぞ、朋章」
 言いながら和樹が浣腸薬の封を切った。
「よせよ! 何する気だ? そんなのよせっ」
 抵抗する征司の肩と腕を宏信と和樹が押さえ込み、後ろに回った朋章の手が尻を割った。力を入れて侵入を拒もうとする肛門に容器の先を差し込む。
「いっ」
 征司の背中が反った。
「征司くん、力抜いてよ。俺、本当に怪我はさせたくないんだから」
 しゃあしゃあと、としか形容のしようがない朋章の台詞に、征司は怒鳴り声をあげた。
「ふざけるな! 悪い冗談はいい加減にやめろ」
「はー、往生際悪いな、このお兄さん」
 宏信が呆れたように首を振ったが、征司にしてみればこれからされるであろうことを諦めて受け入れろというのは無理な相談だった。



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